認知症と漢方①

私が非常勤で勤めている総合病院に「物忘れ」を訴えて受診していらした男性がいました。78歳で奥さんと一緒に来院しました。先週拝見したのです が、どう考えても「物忘れ」の域ではありません。日付も年月日もわからないし、100ひく7の引き算もできず、野菜の名前は4つしか思い出せません。本人 もあまり病識がなく、いろいろと言って話を取り繕うとします。数年前に電気工事の仕事を引退してからひどくなったと奥さんがおっしゃっていました。
急激に認知症のような症状が出てくる病気として、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症があります。それらの病気を鑑別するために血液検査と頭部MRIの予約をして、今日再受診となりました。
やはり私の名前はおろか、以前受診したことも覚えておらず、やはり日付や年号もわかりません。血液検査でも頭部MRI検査でも異常はなく、認知症の初期段階であると診断しました。
奥さんは糖尿病を患っていてインスリン注射をしているそうです。奥さんがもし万が一入院してしまったら旦那さんは生活できないでしょう。すぐに介護保険を申請するようにお話しました。

 

現代医学では認知症の治療方法はありません。なぜ認知症になるかがわかっていないからです。現代医学では、原因がわかれば、それを解決する薬物治療 や手術治療など様々な方法を開発することができます。アルツハイマー型認知症にしろレビー小体型認知症にしろ、ある程度の脳にあらわれる現象(例えばアミ ロイドが沈着するとか)はわかっていますが、残念ながらその本当の原因はわからず、その治療法も開発できないのが現状です。
現在認知症に保険適応のある内服薬でも、その進行を遅くするだけで、残念ながら治癒することはできません。

しかし技術は日々進歩しているので、いつかきっと治療法が見つかることでしょう。それを世界中で待ち望んでいますが、現場ではそれを指をくわえて待っているわけには行きません。

 

現代医学ではそうですが、これを中医学の視点から見てみれば解決方法があるのです。なぜなら中医学であれば物忘れや認知症の原因が考えられるからです。

それでは、認知症を漢方治療、鍼灸治療から見た場合どうに見えるでしょうか。