認知症と漢方②

昔は「ぼける」なんて言っていたくらいで、昔からその病気は見られており、古い本にも原因や治療法があるんですよ。
それらの治療を進めている先生方もたくさんいらっしゃいます。

それは「抑肝散」ではありません。
抑肝散は注意が必要です。
認知症になると物忘れの段階の後に、徘徊したり、急に怒りだしたり、介護することを拒否したり、食事を食べていないと怒ったり、自分が忘れるのを人のせいにしたりと、周りの人に当たるような症状がみられます。これらを周辺症状と言います。
ちなみに物がわからなくなってしまうことを中核症状と言います。
これらの周辺症状で「怒り」を特徴とした症状があったときには、肝気が上行してしまっていると考えて抑肝散を使います。暴れた馬をなだめるようなものだと思っていただければよいでしょうか。ですので、周辺症状でお困りの場合は抑肝散を使うと周りの人に非常に喜ばれます。
そういう使い方をしていただければ中医学的にも合点がいくのですが、現代医学の先生方は御存じないせいか「認知症=抑肝散」とお考えの方が多いようです。
これは仕方ありません。現代医学では、高血圧ではこの薬、喘息にはこの薬、となっているためその「方程式」に当てはめてしまっているのです。
ですから、私が訪問診療で訪れるグループホームなどには「なんでこの人に抑肝散?」という方がいっぱいいました。暴れ馬ではない方にたくさん抑肝散が処方 されているのです。すぐに中止したところ、皆さん元のように元気になって、歌を歌ったりゲームをしたりできるようになりました。

こういうところについても、きちんとした知識がないと、いくら副作用が起きにくいといっても間違った使い方では、副作用以上のデメリットが起こってしまう可能性も考えられるわけです。
暴れ馬でない人に気を沈める薬を使うのは、血圧の低い人に降圧剤を飲ませるようなものです。

もう一人の方は確かに抑肝散でよいのですが、血液検査で低カリウム血症になっていました。抑肝散には甘草という成分を使っています。その薬が場合によると「偽アルドステロン症」という状態を引き起こしてしまいます。この方は私が始めて診察したときに念のため行った採血検査でたまたま分かりました。私にかかる前の医師から漫然とずっとフォローもされずに抑肝散を飲まされていたせいです。これも副作用かもしれないと考えながら使わないと、いくら漢方薬といえども良くないことが起こるという、良い例です。

これは医師が漢方・鍼灸をやる大きなメリットだと思います。

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名前だけ先走ってしまった抑肝散はよく考えて使いたいですね。

それでは認知症は中医学から見るとどんな風に考えられるのでしょうか?